いつか森で会う日まで

いつか森で会う日まで

深い深い森の中。そこにはあなた一人
 彼女については「ネットで作品を発表して人気が出た作家」という、知識とも呼べないような知識と、ネットを使うあたり「現代の作家」という印象しかなかった。だから最新作のタイトルが�dいつか森で会う日まで�eと聞いて意外だった。昔話のような、いい意味で古臭さがある。そうして出会った、田口ランディの作品。舞台は屋久島。  「自分をリセットしたい時、屋久島へ向かう」と語る部分がある。リセットと言っても、森に一人で入って行く。それだけ。しかし、屋久島の深い深い森の中だ。恐怖と孤独に襲われる。どうしてそんな状況に自分を置くのか疑問に思った。孤独になればリセットどころか、ますます混乱しそうな気がしたからだ。が、彼女の目的は別だった。自然と自分だけ、という状況は自分と向き合うきっかけだったのだ。人間ばかりの中で生活していれば、他人に感情をぶつけても、自分には感情をぶつけない。自分と対話することを忘れる。だからこそ、孤独になる必要があるのだ。自分がどんな人間なのか確かめなければ、他人と対話することはできないから。  ちなみに、彼女が小説を発表しようと決心したのは、屋久島に行った後のこと。見事リセットした彼女からは、自分以外の人間に向けたメッセージが紡ぎ出されたのだった。(F)

 ◇ いつか森で会う日まで 田口ランディ・山下大明 PHP研究所



感染―infection

感染―infection

とある名外科医と、その妻である医学者。夫の不審な行動に妻は疑問を抱いていたが、心臓移植の手術を夫の管理下で受けた子供達が、次々と殺されるという事件が起こる…。臓器移植がテーマのスリリングなサスペンス。とにかく読み応えあり!(F)

 ◇ 感染 仙川環 小学館



上手くいかない�dだめ恋愛�eのパターンを、人間行動学の権威として有名な香川大学教授・岩月氏が分析。「だめんず・うぉ〜か〜」の倉田真由美がマンガで分かりやすく解説する。関係なければ良質の読み物、経験があれば助けられる!…かも。(F)

 ◇ くらたま&岩月教授のだめ恋愛脱出講座 倉田真由美岩月謙司 青春出版社



爆発道祖神

爆発道祖神

朝日新聞で連載されたフォトストーリー集。支離滅裂(失礼!)にも思える言葉達と、著者自らが撮影した「日常」の写真が共存している。彼の「日常」は常に嘘と戦うような、正直なスタイル。だからこそ、読めば読むほど心が研ぎ澄まされていく。(F)

 ◇ 爆発道祖神 町田康 角川書店



基礎体温日記

基礎体温日記

作家、漫画家、ミュージシャンでもある著者と子供4人+夫との日常を綴る。これまでも、多分これからも「壮絶」なんて表現されるだろう彼女だけど、その清らか過ぎる魂に嘘偽りなし。自分の意見を持つこと、愛するって何かを教えてくれる。(F)

 ◇ 基礎体温日記 内田春菊 実業之日本社



コンビニ・ララバイ

コンビニ・ララバイ

コンビニ「ミユキマート」で店長を務める幹郎は、息子と妻を事故で亡くしたことを自分が原因だと悔やみ続けていた…。清潔感があるけれど乾いた空間・コンビニを舞台に描く、様々な人間の物語。人間を救ってくれるのは、やっぱり人間だけみたい。(F)

 ◇ コンビニ・ララバイ 池永陽 集英社



Love Letter

Love Letter

「天使のみつけかた」の著者が描くシンプルな恋の絵本。タイトルの通り、ラブレターを送られたような、素敵な錯覚に陥った。恋人に伝える�dすき�eの二文字はまばゆくて、せつなくて、胸が痛くなって、涙が出て…そしてまた、恋がしたくなる。(F)

 ◇ Love Letter おーなり由子 大和書房



非常識

非常識

闘魂ビンタを注入してもらいたくなる、摩訶不思議な説得力にあふれた対談集。テリー伊藤杉本彩など「腹に一物」の4人が、執拗に猪木と絡むも彼の「常識」の前に粉砕する。万物をボーダレスにできる天才。猪木イズムの門、扉を開いてみる?(W)

 ◇ 非常識 アントニオ猪木 河出書房新社



iモード以前

iモード以前

iモードの制作に携わった人」だけでは収まりきらなかった著者。今作では主に�d自分の原型となった�eリクルートでの20年を語る。ものを作り出すことの楽しさを感じることは簡単。問題は、そこから自分が何を作り出していけるかなのね。(F)

 ◇ iモード以前 松永真理 岩波書店