パーク・ライフ

パーク・ライフ

芥川賞? いえいえ、刺激的賞です。
 読書の季節到来。思えば最近、暑さのせいか軽いタッチの作品しか読んでないような気がする。久々にじっくりと、小説でも読むか…こんな発想から選んだ一冊がこれ。芥川賞受賞作である。ここまで読んだ時点でお高くとまった純文学を思い浮かべた人へ。芥川賞なんてのは、偉そうなオマケとでも思ってくれていい。この作品に関しては。  公園通いが日課のサラリーマンの生活は、恋も始まらない、問題も発生しない。つまり何も起こらない。主人公の前に登場する人々を、主人公の目線で描くだけ。淡々。しかし、何か引っかる。恐怖。何か起きそうで何も起きない毎日が、自分にシンクロしていた。「あなたの毎日も、実はこんなに味気ないんだよ。」人間にとってこんなに怖い言葉があるだろうか。人間は、何も起こらず、平和に毎日が過ぎていって欲しい気持ちと、味気のない毎日を恐れる気持ちがある。さらに、その矛盾を抱えたまま生きたいという生き物らしい。一見、悩みっぱなしでつらそうだが、実は一番楽だ。悩むだけで何もしなくていいから。この小説はその矛盾を突いてくる。刺激的だった。ミステリーなんて及ばない、自分の生き方に影響するとんでもない刺激。個人的に、この秋の・食わず嫌いは損をする一冊・NO.1は決まってしまった。(F)

 ◇ パーク・ライフ吉田修一文藝春秋



クール・カクテルズ

クール・カクテルズ

BBCのテレビシリーズ・シェーカー・メーカー・で旋風を巻き起こし、ロンドンのカクテルシーンを変えたと評判のバーテンダーによるレシピ集。写真は美麗、レシピも下手なウンチクがなく、シンプルなのがいい。飲めない人も良質の写真集としてぜひ。(F)

 ◇ クール・カクテルズ/Ben Reed,William Lingwood,平石律子/河出書房新社



愛人体質

愛人体質

香川県出身の女性が描く恋愛小説。一人の女の恋愛を一見淡々と、しかし鮮やかな情感を持って濃厚に描く。「生きている限り自分はこの女から離れられない…」なんて文体はかなり過激。でも・いつだって恋愛は命がけ・なのは真実なんだろう。(F)

 ◇ 愛人体質/上田塁/文芸社



銀座小悪魔日記―元銀座ホステスの過激すぎる私生活

銀座小悪魔日記―元銀座ホステスの過激すぎる私生活

ウェブ上にて連載され、たちまち大人気となった元銀座の一流ホステスによる日記。とにかくどこを読んでも最高に面白い、としか言えない。形容しようとしても無理だが、抜群の破壊力があることは保証。女であれば確実に熱狂しちゃいます…。(F)

 ◇ 銀座小悪魔日記/蝶々, 天野なすの/宙出版



値段の秘密―「ウラ」から見る経済・法律・流通のしくみ

値段の秘密―「ウラ」から見る経済・法律・流通のしくみ

パソコンの高い、安いの基準はどこにあるのか。映画料金はなぜ全国均一なのか。ペットは売れ残ると安くなるのか…。生活に密着した「値段」に関する疑問を解説していく。読まなくても生きていけるけど、読んで損はしないだろう一冊。(F)

 ◇ 値段の秘密/阿部邑紀/実業之日本社



沢田マンション物語

沢田マンション物語

12歳でアパート経営を決意、弟子入りもせず独学で家を建てた人がいる、しかも高知に。手作りだから綺麗じゃない。便利さには欠けてる。でも読めば読むほどそれらのくだらなさを感じる。彼の住宅は人が主役。こんな暖かい家、見たことない。(F)

 ◇ 沢田マンション物語/古庄弘枝/情報センター出版局



MOMENT

MOMENT

とある病院で、患者達の間に囁かれる噂話。死を前にした人々の願いを、必ず叶えてくれる人物がいるという…。ミステリーらしくない人間描写の濃さにまず感動、続いて導入部での粋な計らいに唸る。ラストは程良いスマートさに思わずニヤリ。(F)

 ◇ MOMENT/本多孝好集英社



こんな○○は××だ!―鉄拳作品集

こんな○○は××だ!―鉄拳作品集

作者の名前を初めて聞いた人、彼はお笑いです。知っていた人、とうとうやっちゃいました。自らが書いたイラストを用い、不条理なギャグを連発する問題芸人・鉄拳。「なるべくして本になった」と言っても過言ではないその世界は、ただ狂気に溢れる。(F)

 ◇ 鉄拳作品集 こんな○○は××だ!/鉄拳/扶桑社



人間はどこまで耐えられるのか

人間はどこまで耐えられるのか

「いそうでいない人」という言葉があるが、著者はまさにそれ。人間はどこまで暑さに耐えられるのか、を検証する人はいたと思うが、ここまで情熱的に取り組む人がいるとは。あんまり真剣で最初は笑ったが、だんだん感心してしまうから怖い。(F)

 ◇ 人間はどこまで耐えられるのか/F・アッシュクロフト,矢羽野薫/河出書房新社