100s

100s

「力」をください、その一歩が踏み出せるように
 音楽には「力」がある。ドライブを気持ちよくする力、眠りを安らかにする力、失恋した感情にリンクして“かわいそう感”を高める力…。なのに、そのどれにも当てはまらないのが彼の歌だ。しかし、背中を押すようにヒトの心を掻き立てて動かす力が、ある。どしゃぶりの気分の時も、聴けば前向きになれてしまうのだ、不思議なことに。  基本的に楽曲はシンプルな8ビートのミドルテンポ。だけど高らかに、伸びやかに、空に向かって放たれる歌声は、様々な情景や想いを運ぶ。足どり確かに歩いて行く後ろ姿と固い意志。初秋の、薄い水色の空に流れるそよ風。悲しさを見せないように淡々と去っていく、旅立ちと別れのシーン。静かな楽曲の中から響いてきそうな大地の息吹。見事な例え話で歌い上げる、恋とか愛の切なさ。そのどれもが「中村語」と言うべき、会話口調のような独特の言葉で歌われている。自分に言い聞かせるように、誰かに語りかけるように。偽りのない言葉には苦悩や迷いもあるけれど、それをはねのける強さや意思がある。痛みを知っている人の方がずっと強いのだ。  つらいつらい時にはどうか聴いて欲しい。「たとえ、この先どっか、何があるとしても、どうか、歩みさえ止めぬように」。歩いて行こうと、心から思えるはずだから。(A)

 ◇ 100S中村一義東芝EMI



"The Maiku Hama Theme" Original

永瀬正敏主演のTVドラマ「私立探偵濱マイク」で毎回流れる「濱マイクのテーマ」と、ドラマ以前に発表された劇場版3部作からの代表曲を収録。交互に響くホーンとフルートの掛け合いは、ドラマを知らない人が聴いても十分満足できる出来だ。(A)

 ◇ "The Maiku Hama Theme" Original/音楽:Symphonic Defoggers めいなCO./フォーライフミュージックエンタテイメント



Naked Ride Home

Naked Ride Home

まるで良質のロードムービー。目を閉じれば、都会の喧噪や田舎の静寂など、様々な夕刻の情景がイメージされる。もちろん、主人公は自分。時に疾走していたり、立ちつくしていたり。日本人では描けない珠玉のウエストコースト・サウンドだ。(W)

 ◇ THE NAKED RIDE HOME/JACKSON BROWN/EElektra



My Way

My Way

毎回新しいジャンルに踏み込み、リスナーをいい意味で裏切ってくれるAIRの新作は、なんとムーディなファンク&ジャズ�𠂉クールで透明な声が、1曲の中でラップとメロディを歌い分ける。合間に入るのは、心に染み入る懐かしくて切ないバラード。(A)

 ◇ My Way/AIR東芝EMI



E

E

約2年半ぶりのアルバムは、CMソング「花になる」を含む全19曲の大作。70年代くらいの欧米ロックを思わせるスタンダードなナンバーを、ゴロ合わせで書かれたような歌詞にのせてマイペースに歌う。それで“泣かせる”民生はスゴイ。(A)

 ◇ E/奥田民生Sony Records



NONA REEVES

NONA REEVES

「ニッポンのキング・オブ・ポップ」を目指すノーナのセルフタイトルアルバム。むずがゆくなるようなスイート&ラブリーな歌詞と声も、80年代ディスコ調のサウンドと一緒なればオシャレに決まるから不思議だ。クラブでかけて踊りたいネ。(A)

 ◇ NONA/REEVES/コロムビアミュージックエンタテインメント



A New Morning

A New Morning

「失ったものほど愛おしい」というロックの大理念を今作でも掲げたsuede。上作です。タイトルを迎えるまでの葛藤、恐れ、後悔、退廃…が繊細に表現されています。そしてそのどれもが美しい。新しい朝を迎えるまでに、しっかりと根を生やせ!(W)

 ◇ A New Morning/SuedeSony International



Fragile   (CCCD)

Fragile (CCCD)

彼女が洋・邦の名曲を独断と偏見でセレクトしたカヴァーアルバム。吐息混じりの深い声で静かに歌う、ローリング・ストーンズ、ポリス、荒井由実など全10曲は、一発録音だからか、弾き語りライブを聴いている気分になる。癒されたい人に。(A)

 ◇ Fragile/畠山美由紀フェイスレコーズ



Illumination

Illumination

ジャム時代から音楽的な引き出しが多く、やることもいちいち格好イイ彼。本作でも、様々な音楽的要素をポール・ウェラーというフィルターを通して、イギリス人らしく紳士的に仕上げた。ただし、叙情的なサウンドが目立ちだしたのは、年のせい?(W)

 ◇ ILLUMINATION/PAUL WELLER/Independiente