それでも言葉で伝えていくということ
 言葉の限界に愕然とさせられることがある。言葉という生き物に畏怖を感じることがある。自分の中のあふれる思いを、言葉を操ってうまく相手に伝えることが出来ない時に。それは、大切な人ほど完璧を望むあまり、伝えたい気持ちと話す言葉の誤差は大きくなって…。そして、もどかしさと同時に生じる「相手にちゃんと伝わっているのか、誤解されてはいないか?」という不安。「言葉よりももっと気持ちが伝わる伝達方法があれば…」。哀しい結果、現在まではない。  恐らくそのようなことは百も承知で、言葉と対峙し続けているアーティストがいる。中島みゆき。葛藤の片鱗を微塵も見せることなく、言葉を紡いでいく。もちろん、テクニックでカバーしている訳ではない。時に赤子のように大事にしながら、時に殺人者に叩き付けるように、言葉と“刺し違えてもいいほど”真剣に付き合いながら、産み落としているのだ。  本作はそんな彼女のセルフカバーアルバム。「夜会」で演奏された曲や、「雪・月・花」など他のアーティストへの提供曲、デビューアルバムから名曲「海よ」も収められた11曲の子供達だ。「時はいま、いかりをあげて、青い馬に揺れるように、心の荷物たちを、捨てにゆこうね」(「海よ」)。  言葉の無限の可能性を、もう一度信じさせてくれる。(W)

 ◇ おとぎばなし -Fairy Ring- 中島みゆきさだまさし ヤマハ



少しミスチルの面影を感じる甘くも切ない声で歌うのは、“恋人と別れた時の痛みはいつか忘れてしまう”ことへの“なんで”。リアルな感情を表した歌詞に、共感する人も多いはず。変わってカップリングは、脳天気でポジティブなポップソング。(A)

 ◇ なんでザ・ベイビースターズ Ki/oon Records



Last DJ

Last DJ

よく“正統派ロックの継承者”と言われているが、彼のサウンドはそんな力強いものではない。震えながら昇っていくような、人間味あふれる感覚こそが彼の持ち味。今作でも渇いたサウンドの中に、ジレンマをはらむヴォーカルを滲ませる。(W)

 ◇ THE LAST DJ−TOM PETTY AND THE HEARTBREAKERS  Warner Brothers



ふさわしい人

ふさわしい人

まさかの活動停止を発表したホフ ディラン、最後のマキシシングル。ベイビーが“ありがとう/バイバイ”と優しく歌うラストに胸が締めつけられ、ユウヒがつぶやく雪の情景が目の奥に焼き付く。この曲を含むベストアルバムも同時発売。(A)

 ◇ ふさわしい人 ホフディラン, 渡辺慎, 小宮山雄飛



Testify

Testify

彼の音楽は、ズバリ“夜のポップミュージック”。ドライブに、ディスコで、また一人ひっそりと部屋で…と、あらゆる夜に彩りを与えてくれる。一握りの寂しさを織り交ぜて。軟弱? いえ、繰り広げられる彼の音楽は、自身のアンチテーゼです。(W)

 ◇ TESTIFY PHIL COLLINS  Atlantic



PLAY ROCKS(CCCD)

PLAY ROCKS(CCCD)

日本語詞の“青春ロック”が目立った前作から一転、疾走感ある英詞のアメリカンロック&メロコアが炸裂! スカッと晴れた夏空みたいな爽快ソングが続く。モンバスを盛り上げたシングル「ROCK THE SUN」「LIFE ON THE WAY」も収録。(A)

 ◇ PLAY ROCKSPENPALS 東芝EMI



One night robot kicks the rock

One night robot kicks the rock

トルネード竜巻」という名前に、ほとんどの人がハードコアバンドを連想しそうだがまったくの誤解である。フワフワ揺れる透き通った女性ボーカルが耳に心地いいポップバンドなのだ。声とは裏腹に、たまにひねくれるアレンジも聴き応えあり。(A)

 ◇ One night robot kicks the rockトルネード竜巻 colla disc



Smells Like Teenage Symphony

Smells Like Teenage Symphony

スピッツの名曲を、林檎、ユーミン中村一義、民生、小島麻由美…と、豪華すぎるアーティストたちがカヴァーして1枚に集約。スピッツの歌なのに、完全にそれぞれのものにしてしまっている。オリジナルが持つ“切なさ”はちゃんと残して。(A)

 ◇ 一期一会V.A. Teenage Symphony初恋の嵐, ゲントウキ, セロファン, 永江孝志, カーネーション, タイライクヤ/Dreamusic



One By One

One By One

熱すぎる「フー・ファイターズ」の4th。いきなりアクセル全開のオープニング曲「オール・マイ・ライフ」から終曲「カム・バック」まで、弛緩は一切なし。一貫して抑圧からの緊張感に包まれている。情熱を傾ける矛先が見えない人へ。(W)

 ◇ ONE BY ONEFOO FIGHTERS RCA